2018年09月14日

モデルガンのブロゥバックパワー その④

 モデルガンのブロゥバックパワーはカートリッジによって差がある。
 これは、モデルガンファンであれば誰でも知っていることです。ですが、同じキャップ火薬1粒を使いながら、なぜ、パワーに差が生まれるのかを知っているガンファンは居ません。少なくとも、私は過去に会ったことがありません。
 また、一般的に‥‥というか、「常識」として、「プラグファイアカートリッジはガス漏れがあるからパワーが下がる」がありますが、それは誤解です。完全なる間違いです。
 少しだけガス漏れはあるのは事実ですが、それは3%~5%であって、それくらいのガス漏れによるパワーダウンは「誤差内」です。
 ガス漏れが20%を超えると、ハッキリとパワーダウンを感じられます。

 では、どうして、カートリッジによってパワー差は起こるのか?
 その話を進める前に、5%のガス漏れ(パワー差)は、結局のところ誤差内であることの再確認をしておきます。

 ブロゥバックモデルガンでは、キャップ火薬の発火・燃焼によって発生するガスを使い、スライドを後退させます。これは、ガスガンが、ガス圧でBB弾を発射するのと考え方は同じです。
 ただし、BB弾は0.2g前後と軽いですが、モデルガンのスライドは50gだとか、100gと、重いです。BB弾の200倍、300倍、400倍の重さです。また、リコイルスプリングも固いです。ブロゥバック時、ハンマーも起こしますが、メインスプリングも固いです。ブロゥバックには大きなパワーが必要だと感じます。

モデルガンのブロゥバックパワー その④

 エアガンから発射されるBB弾のエナジーは1J弱です。それよりもウンと低いものも多いです。
 対して、モデルガンのカートリッジが生み出すエナジーは5J前後か、それ以上です。大きいです。


 さてさて。
 前回も発表しましたが、各カートリッジによって発揮されるブロゥバックパワーには差があります。次の通りです。

モデルガンのブロゥバックパワー その④


 古い話になりますが、1983年の春に、コンバットマガジンでマウザーM712を紹介する記事を書きました。モデルガンテストリポートです。
 手元にコンバットマガジンのバックナンバーが無く、何月号かは分かりません。
 その中で、マウザーM712にUZI用のカートリッジを使用してのブロゥバックテストの話を書きました。記事中で、「UZI用カートリッジの方がストローク(プラグの以上距離)がマウザー用よりも2mm長いので、ブロゥバックの勢いも大きくなります。高く排莢されます」という意味のことを書きました。UZI用カートリッジの使用を薦めるという流れでした。

 その記事に対し、くろがね さんが、「2mmのストローク差があるとパワーが大きくなるので、UZI用カートリッジを使うのは危険のためお薦めしません」という話を、記事内で書きました。
 くろがね さんの意見は間違いではありません。「お薦めしない」というのは意見としてはアリです。
 では、本当に危険なのか? です。

 当時、私は、誤解していました。UZI用カートリッジの方がストロークが2mm長いので、それでブロゥバックパワーがアップし、結果としてUZI用カートリッジは高く、遠くまで跳ぶのだと、そう勘違いをしていました。間違えました。
 そして、くろがね さんも、そう勘違いしました。
 
 その勘違いとは、10mmのストロークが12mmに増えると、「パワーアップは20%アップする」という、勘違いです。
 これは明らかな間違いです。
 10mmのストロークが12mmになっても、距離は20%アップしても、パワーは20%も増えません。最大で7%ほどです。現実的には5%前後です。そのことは下記の式からも明白です。

モデルガンのブロゥバックパワー その④

 X1に0を代入し、X2に10を代入すると、マウザーM712のブロゥバックパワーが求められます。
 そして、「2mm」延長された際の、増加するパワーは、X1に10を代入し、X2に12を代入することで求められます。
 カートリッジ内の圧力は、キャップ火薬が発火・燃焼した瞬間が最も高く、ブロゥバックが進むことでどんどん下がって行きます。そのため、2mmのストローク延長では、トータルのブロゥバックパワーは5%ほどしか増えません。とてもじゃないけど20%なんて増えません。
 このことは、上記の、各カートリッジが発揮するパワー差を見ても分かります。
 マウザーM712用カートリッジとUZI用カートリッジは、同じパワーとなっています。高さ、104cmまで錘を持ち上げています。

 5%ほどのパワー差では、ハッキリとした差は出てきません。
 もちろん、実験なり、測定方法の精度が低いことも、差が出なかった、求められなかった要因の一つですが、それを考慮しても、やはり差らしい差はでてきません。
 パワー差を実感するにはパワー差で20%欲しいです。最低でも10%は欲しいです。それくらい無いと、パワー差は実感できません。


 今回は、5%ほどのパワー差は「誤差」であって、それを実感するのは極めて難しいという話でした。
 それと、ストロークが2mm(20%)ほど伸びても、大きなパワーアップにはつながらないことの再確認でした。

 次回、CPカートリジのブロゥバックパワーが、PFカートリッジのそれよりも大きな原因に迫ります。






Posted by mac-japan  at 19:07